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蒸発する志望動機。学生の行動・心理で見直す採用モデルの変化

株式会社ピボット 代表取締役/ブランド・コンサルタント 西山 亜矢子


企業の内定出しが早期化する一方、入社意思の確定には時間がかかるようになっており、夏を過ぎて以降の内定辞退が問題化しています。

 

その要因は、一言でいうと「<志望動機>に基づく採用コミュニケーション」の崩壊であろうと思います。

なぜそうなってしまったのか、採用活動が暗黙に前提している<フェーズ・モデルの変化>に注目して、紐解いていきます。

 

 

#年間計画 #コミュニケーション計画 #内定クロージング #学生ジャーニー

※当分析は、毎年通年で行っている学生インタビューに基づきます


【起こっていること】 採用フェーズ全体の流れはどう変化しているか 

 

 

◆旧来の採用フェーズ・モデル

 =認知・発見→興味・関心→魅力理解→比較・検討→(内定)→意思決定

 

 

採用活動に限らず、マーケティング全般で古くから使われてきたモデルです。

このモデルでは「本人の興味をきっかけに/企業研究が行われ/企業理解が進むことで/志望が高まり/最終的に入社に至る」心理的エスカレーションが信じられています。

 

別の言い方をすると、「十分な志望動機の完成」をゴールに据えて、学生とのコミュニケーションを想定しています。

プロセスを進める主体はあくまで学生。企業はそのための「材料」を提供します。

多くの企業は今でもこのモデルに基づいて採用を設計し、ベンダーは媒体提案しています。

 

 ◆最新の採用フェーズ・モデル
 =レコメンド→ゆる検討→適応→(内定)→不安解消→意思決定

 

一方で、学生の実態に即すと、現在の採用モデルはこのように変化しています(詳細は後述)。

 

このモデルでは心理的なエスカレーションが「ない」状態で、学生は初期の検討(例:夏インターン選び)を迫られます。

さらに言えば、十分な心理的エスカレーションが起こらないまま(志望動機が完成しないまま)内定はもちろん入社先の決定にまで至ります。

 

もはや、学生は「企業理解に基づく/志望動機との一致によって/企業を選んでは【いない】」のではないでしょうか。

 

1990年代後半に「エントリーシート」が登場して以来、30年程続いてきた「志望動機に基づく採用コミュニケーション」は今、崩壊しつつあります。


【背景にある学生の行動・心理】 学生の変化を紐解く個別のフェーズ解説

 

◆フェーズ【レコメンド】

「インスタントな軸で、受け身に始まる出会い」

 

ファーストステップである企業の認知・発見ですが、旧来は本人が主体的に企業を探す必要があったので、その時点で「志望の軸の原型」のようなものがありました。

 

 

現在は、ナビサイトのバナーが/スカウトが/生成AIが、おすすめ企業を【レコメンド】してくれます。

そのおススメの軸も「同じ大学の人が多く受験」「似たプロフの人が受験」「現在募集中」など、非常にインスタントで内発的な自分軸を全く含まないものです。

 

スタートラインからして志望が論点になりづらくなっており、行動の主体性も極めて薄くなっています。

 

 ◆フェーズ【ゆる検討】

「早い時点でコンパクトに受験候補を絞る」

 

今のスケジュールでは、就活開始後すぐに夏インターンの応募先を【検討】せねばなりません。

リコメンドに基づきインスタントに生成された候補先リストから「志望動機が全く煮詰まらない段階で/インターン応募先の絞り込み」をすることになります。

 

さらに、売り手市場化と若い世代のタイパ志向を背景に、インターンも本選考も受験先候補は少数に厳選したい傾向です。

候補企業の幅も深さも絞込みの結果も「コンパクト」に、【ゆるく検討】が行われます。

 

◆フェーズ3 【適応】

「まずは受かるために企業に合わせて選考をハック」

 

旧来の選考参加とは、企業理解をしっかり進めた上で臨む、【本質的な比較・検討】のプロセスでした。

 

しかし、現在の学生にとっての選考参加は、選考を突破して内定を獲得するための【適応】活動にすぎません。

内発的な「志望動機」の完成を待っていては受験に間に合わないため、いったん脇へ置き、企業の求めに合わせて選考ハックを繰り出すことに集中します。

そのため、このフェーズでも志望動機は十分に深まりません。

 

◆フェーズ4 【不安解消】

「内定後に始まる配属などの長いネガティブチェック」

 

意思決定のために内定後に行うのは、入社にあたっての【不安解消】です。

 

「志望動機」のような本質的なエンゲージメントの軸ができていないため、自身と会社のマッチング確認(ポジティブチェック)ではありません。就労条件や待遇などのネガティブチェックが中心になります。

具体的には、「配属」「期待できるキャリア」「待遇」「働き方」「××ハラスメント」などの不確実要素潰しです。

 

これらは制度的に如何ともしがたい要素が含まれるため、企業側は「企業理解→志望の向上」で戦おうとすることも多く、両者の思惑がすれ違い交渉が長引きがちです。


次回予告【問題解決の処方箋】

 

「志望動機に基づく採用コミュニケーション」の崩壊は、どのような構造で起こっているのかをご説明してきました。

 

「志望動機」とは「事業・仕事・人という総合的な企業理解」によって作られるため、応募者と企業の本質的なマッチングに繋がります。

それが失われると、採用の課題としては「長引く内定フォロー」「遅すぎる内定辞退」という形で現れますが、「早期退職」などの配置・育成の課題としても現れることが懸念されます。

 

それでは、どうしたら「志望動機を核とした本質的なマッチング」を目指すことができるのか。次回はその具体的な解決策を考察します。


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