●ナビサイトの利便性が生む「おすすめ情報」の盲点
最近の主要ナビサイトを開くと目に飛び込んでくるのは、<学生の即物的な企業選択>を後押しするレコメンド情報です。
「早期選考直結インターン」「今からESを出しても間に合う」「エントリー締切間近」「選考なしでESのみ」など時期を軸にしたものや、「大手内定者が受験」「〇〇大生に人気の企業」「人気企業ランキング」など人気度を軸にしたものなどが目立ちます。学生にとって、さほど悩まず・効率的に企業やインターン選びができる、利便性の高い導線設計になっています。
一方、採用側が期待する「このような仕事を希望するなら、この企業」といった本質的な「企業選択」の軸をもつレコメンドは、(ナビサイトにもよりますが)目立たない印象です。
時期や人気度を軸にした企業選択に誘い込まれることで、自分の価値観・就活の軸を言語化し、仕事・企業とマッチングさせる、業界・企業の幅出しをする、といった行動が消失/軽視されるリスクをはらんでいます。ナビサイトのレコメンドを通じた受動的な選択に過ぎないものを、主体的・能動的に選んだ軸と思い込んでしまう可能性があるからです。
先週お伝えした「生成AIによるタイパのよい企業研究」なども考え合わせると、「なぜその企業/職種か」という核心の検討が脆弱で、確固とした就活軸を持たないままインターンや選考に進んでいく学生が増えていることに思い当たる方も多いのではないでしょうか。
こうした「初期段階での企業選択の甘さ・浅さ」が、複数内定取得後にはじめて本質的な選択を迫られ、選べない・辞退が遅くなるといった現象にもつながっていると思われます。
●学生との接点を「義務的参加」から「就活軸形成の場」へ
採用側の課題は、レコメンドやAIで整えられた“見栄えの良い応募書類”の裏にある、理解の深さと一貫性をどう測り、育てるかにあります。そのためには、学生との接点を「企業PR(情報提供)の場」から「軸の形成を促す材料提供と問いかけの場」に組み直す必要があります。
たとえば、現場社員が自身の仕事観や意思決定を語るエピソード提示、他社経験者の転職理由や比較軸の共有、学生自身が価値観を言語化できる問いの設計。これらを組み込むことで、説明会やOB・OGとの接点を“企業・職業選択の軸を立てる機会”に変えることができます。「義務的参加」から「納得形成の場」へ。これが学生接点を見直す第一歩です。
●レコメンドを前提とし「早期の軸の形成」を支援する
重要なのは、レコメンド情報の存在を否定することではありません。むしろそれを前提に、早期に就活軸の“修正・言語化”を支援する導線を用意することです。ナビサイトの利便性を理解しつつ、初期フェーズでしっかりとした就活軸の形成を促すための対話を設計し、理解の深さを測る評価プロセスを導入することが、28卒以降の内定承諾の質とタイミングを改善していくことにつながります。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
【本資料に関するお問合せ】STUDENTSʼREPORT編集部support@pivot-inc.co.jp|050-3649-7671
©株式会社ピボット「STUDENTSʼREPORT」は株式会社ピボットの著作物です。会員以外の閲覧および無断転送、複製、転載はご遠慮ください。
