26卒インターン企画前に見直す!「ガクチカ系設問」の基本と運用
株式会社ピボット 代表取締役/ブランドコンサルタント 西山亜矢子
新卒採用でガクチカを尋ねることは、すっかり定着しています。
何となくは運用できているがゆえ、「本当にこれでいいのだっけ…?」という疑問を抱えながら、前年度の質問を流用しているケースが多いのではないでしょうか。
「こちらが求めているような回答がなかなか返ってこない」
「評価軸や質問方法が面接官の経験まかせで、適切に選考(評価)できているか不安」
といったお悩みを解消するために、今回はガクチカのそもそも論を整理してみたいと思います。
【内容】
1.ガクチカ系設問で見ようとしていること
2.さらに機能させるためのアプローチ
3.細分化テンプレを用いた、設問づくり例
4.ガクチカ系設問では見られないこと
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1.ガクチカ系設問で見ようとしていること
当たり前ですが、学生には仕事に直結する業績(職務経歴)がありません。
それに類似したものを見るための手段が、「学生時代頑張ったこと(ガクチカ)」系の質問です。
学生が語る「成果」の部分は、必ずしもビジネスっぽいものではなく、大抵は量的にもささやか。
それゆえに、取組みのプロセスとスタンス(が自社とマッチしているか)を見ることになります。
ガクチカ系設問(の選考意図)を定義すれば、
「経験談によって行動様式と価値観を読み解き、自社とのマッチングを見ている」
ということになるでしょう。
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2.さらに機能させるためのアプローチ
自社の行動様式や価値観にフォーカスした質問づくりによって、ガクチカ系設問は一段と機能するようになります。
こちらが知りたいことを確認しやすい回答(作文)を引き出し、書類選考や面接で自社とのマッチングが測りやすい質問づくりをしましょう。
そのためには、まず「学生時代に頑張ったこと」に含まれる要素の細分化が必要です。
以下は、細分化の一例です。
<「学生時代に頑張ったこと」の細分化テンプレ>
(1)(人生において/大学生活で)成果を上げた経験は何か
(2)誰と行ったか
(3)背景や目的
(4)チームやあなた個人が定めた目標
(5)目標達成のために想定した課題と解決のためのアクション(仮説)
(6)取組み中に発生した課題と解決のためのアクション(実際)
(7)取組みで発揮した強み
(8)取組みで克服した弱み
(9)チームの中でのあなたの役割
(10)一番挑戦したかったこと/最も苦労したこと
(11)定量/定性的な結果/成果
(12)学びや気づき
(13)今後、活かしたい事/その後に活かした経験
上記から、要素(=部分質問)を何個か選んで組合せ、自社の行動様式や価値観にフォーカスした質問を作ります。
このような形で作られた質問は、実際のESでも増えています。
聞きたいこと(設問意図)が明確なため、深掘りもしやすく、評価者による評価軸のブレも起こりにくいと思います。
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3.細分化テンプレを用いた、設問づくり例
細分化テンプレを組み合わせて求める人材に適した設問づくりを行うと、例えば以下のようになります。
設問づくり例:1
「多様なステークホルダーを巻き込み・協働しながら、大きな案件を長期でやり遂げる人材が欲しい」場合
(1)+(2)
大学生活で、最も時間を費やし、チームで大きな成果を上げた経験は何ですか
(4)
その際、チームやあなた個人が定めた目標を教えてください(定性と定量の両面で答えてください)
(6)+(10)
取組み中に発生した課題と解決のためのアクションを教えてください(あなたの役割や発揮した強みを中心に答えてください)
その際、最も苦労した点と、それを乗り越えるために工夫したことを詳しく教えてください
(11)
最終的に、どのような成果を上げることができたか具体的に教えてください(定量と定量の両面で答えてください)
設問づくり例:2
「前例がないことにも主体的・挑戦的に取り組み、粘り強く試行錯誤できる人材が欲しい」場合
(1)+(10)
人生において、最も挑戦的に取り組み、成し遂げたことを教えてください
(3)
そのことに取り組んだきっかけ・動機・目的などを具体的に教えてください
(5)
取組み中に発生した課題と解決のためのアクションを教えてください
(11)+(12)+(13)
取り組んだ結果、どのような学び・気づきがありましたか
その後、学び・気づきを活かすために取り組んだこと/取り組もうと考えていることがあれば、合わせて教えてください
前提として「求める人材」の言語化が必要ですが、すぐに定められない場合は「ミッション・ビジョン・バリューやウェイ」「若手社員の人事考課/評価の項目」などを参考になさってください。
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4.ガクチカ系設問では見られないこと
ただ、ガクチカ系設問は「必ず用いなければならない」ものではありません。
当然、選考の目的(求める人材像に適したスクリーニング)によっては、別の手段の方が適切な場合もあります。
<より深層の価値観を見るなら「自分史」>
ガクチカ系設問では、行動様式と価値観を読み解いて自社とのマッチングを見ますが、どちらかと言えば行動様式に重きが置かれています。
原体験に基づく本人の性格、深層心理に迫るような価値観を読み解きたい場合は、「自分史」系設問の方が向いています。
幼少期~現在に渡って、ガクチカと同じ行動様式が繰り返し観察できれば、それが嘘偽りのない再現性が高いものであることも確かめられます。
(1つの話題のガクチカだけなら、偽ることも可能です)
<高い視座や問題意識を見るなら「課題作文」「学業・専攻」>
国家総合職(官僚)や日本銀行などでは、ガクチカは最重視されておらず、抽象度の高い「課題作文」によって視座や問題意識を測ります。
具体的には、『理想の社会とそれを実現するための政策』『関心のある社会課題とそれを実現するための事業』といった設問です。
社会像→数多ある課題からの選択→解決の切り口→解決案という、ブレイクダウンのステップが長い内容をコンパクトな字数に落とすため、高い論理性も求められます。
視座や問題意識のバックグラウンドは、課外活動よりも「学業・専攻」への取組みによって確認されます。
<特定の専門スキルを見るなら「資格」「学業・専攻」「資料の読み解き」>
経験者採用に匹敵する専門スキルを問うような職種・ビジネス領域限定の募集コースの採用でも、ガクチカは最重視されません。
経験者採用や資格試験に近いような選考が、初期スクリーニングの主軸となっています。
その場合は、ガクチカ系設問に替わって職種・ビジネス領域に直結する「資格」「学業・専攻」などを精査します。
特にデジタル系の職種では、既存のビジネスを変革する人材が求められることも多いため、自社の既存の行動様式や価値観へのマッチ度を測る選考が適切でない場合もあります。
『複数年の有価証券報告書にあらかじめ目を通した上で(宿題)、財務戦略に関するグループディスカッションに臨む』といった1次選考が課されるケースもあります。
<ガクチカ系設問は総合職一括・ポテンシャル採用に適した方法論>
現在、大手企業の25卒の募集要項の公開が進んでいますが、「職種別コースの追加発表」「募集資格に第二新卒を含むケースの増加」などが見られます。
今後も総合職一括採用の解体は進み、一部の学生は練度に応じて、経験者採用に近い枠組みで採用されていくことになるのではないでしょうか。
そうなった場合、ガクチカ系設問による一律の初期スクリーニング(足切り)は、採用の枠組みにそぐわなくなります。
26卒夏インターンの募集コースや選考の枠組みについて、3~4月に最初の検討を行われる方が多いかと思います。
その際、「何となく昨年踏襲」になさらず、採用の大きい枠組みや求める人材像の変化に合わせて、ガクチカ系設問の使い方・設計を見直されることをおすすめします。
トレンド変化の流れを踏まえても、よきタイミングです。
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