株式会社ピボット シニア・コンサルタント 豊崎 康弘
<採用マーケティング>特集の2回目です。
前回は、戦略立案の前提となる「市場データ」が意外と活用されていないこと、前年踏襲のフォーマット、断片情報が多く、有益な示唆(インサイト)を得るには踏み込みが甘い点に触れました。
2回目からは、一般的なBtoCマーケティングで用いられる「ファネル」「リード」の考え方を、新卒採用に当てはめます。今号は「母集団形成」フェーズ、次号は「選考」フェーズを予定しています。
【今号の目次】
BtoCマーケティング手法の有用性
「ファネル」「リード」「コンバージョン」
母集団形成を「ファネル」で読み替える
採用マーケティングならではの活動
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【連載・第2回】母集団形成と「リード」
■ BtoCマーケティング手法の有用性
採用活動にBtoCマーケティングの考え方を応用するメリットは大きく3点です。
・一般的なマーケティング手法をそのまま応用できる
・営業など他部門、外部ベンダーとも共通枠組みで議論できる
・一般論に収まらない「採用ならでは」の領域が浮き彫りに
■ 用語解説:ファネル・リード・コンバージョン
一般的なBtoCマーケティングでは、見込み客の獲得から購買(契約成立)、ロイヤル顧客化までを「ファネル(漏斗)」と呼ばれる枠組みで整理します。
ファネルの分け方はさまざまですが、以下の分類が一般的だと思います。
【発見】→【探索】→【購買】→【関係構築】
発見フェーズから探索段階への移行、具体的には「個人情報と関心を伴うリクエスト(引き合い)」が「リード」です。採用活動では「インターン応募」あるいは「マイページへのエントリー」が該当するでしょう。
獲得されたリードを「育成(ナーチャリング)」していきます。採用活動では「インターン参加者のフォロー」が典型的なナーチャリング活動です。
リードの獲得から育成まで。ポイントは人数集めではなく「関係性を次の段階に深めること」です。次段階への転換を「コンバージョン」と呼びます。
■ 母集団形成を「ファネル」で読み替える
母集団形成の各局面を「ファネル」と考えると、以下のようになるでしょう。
【リード獲得】≒インターンシップ応募まで
学生が個人情報(氏名・連絡先・大学名など)を伴ってエントリーした時点で、企業は初めて「リード」を獲得します。採用活動の初期に行う露出は、リード獲得の手段(チャネル)と言換えることができます。
(主なチャネル例)
・インターン情報サイト
・採用HPのインターンシップ情報
・スカウトDM(インターン勧誘目的)
【リード育成】≒ES提出まで
採用活動における重要な「コンバージョン」はES提出(本選考への応募)です。関係性をES提出まで深めることが「育成(ナーチャリング)」の本質ということになります。
※リードナーチャリングの基本は、関心度や行動履歴に応じてコミュニケーションの濃淡を変えることにあります。
フォローメール・参加者懇談会・社員面談なども、本来は、相手に応じて接触の強弱をつけるべきなのでしょう。
【選考フェーズへの移行(コンバージョン)】≒ES提出
ES提出は母集団形成フェーズの終着点であると同時に、本選考フェーズへの移行点でもあります。採用活動の前半フェーズは、まずはES提出率(コンバージョン)の向上をベンチマークとして整理する必要があります。
※ES提出以降(選考)のフェーズは次号で扱います。
■ 採用マーケティングならではの活動
一般的なマーケティングの枠組みを当てはめることで、逆説的に「採用活動にしかない特性」が浮かび上がります。特に以下の点が重要です。
【一期一会の関係性】
個人単位で見れば、採用プロセスは一期一会の線形的な流れ。次年度は出会えない一度きりの経路です。
※ただし「採用ブランド強化」の視点にたつと、全く別の構造が見えてきます。次年度の「リード獲得」には、前年度のプロセスが大きく影響するからです。この点は別途「採用ブランドマーケティング」として扱います。
【スタンスの違い(フォローか育成か)】
「インターン参加者フォロー」と「育成」、「歩留まり」と「コンバージョン」。活動内容は同じでも、用語法に込められたスタンスは真逆です。
「フォロー」はこぼれ落ちそうな相手をつなぎとめる、受け身のニュアンス。「育成」は能動的に関係を育てる含意です。同様に「歩留まり」は結果として残った割合、「コンバージョン」は転換を起こす行為そのものに焦点があります。
呼び方ひとつで、同じ数字・同じ活動への向き合い方(受け身の防衛策か、能動的な打ち手か)が変わってくるはずです。
【「選考」という独自領域】
一般マーケティングには、こちら側(企業)が「顧客を選別する」という概念がありません。企業が選ぶのではなく、顧客が企業・商品を選ぶ、という一方向の関係が前提です。
一方、採用活動は「選考」こそが目的そのもの。企業が学生を選び、学生も企業を選ぶ、双方向の選別プロセスが母集団形成の先に控えています。
採用活動にしかない固有領域「選考」活動。次号ではこのプロセスを「双方向スクリーニング」という視点でとらえ直します。
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