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インターンにこれ以上何を望めるのか?施策の限界と次の一手


株式会社ピボット シニア・コンサルタント 豊崎康弘

 

【要約】

〇採用上のキラー施策は3~5年で耐用年数を迎える

〇飽和状態のインターンシップ 細かなカイゼン余地は残るが・・・

〇打ち手の本丸は「本選考の枠組み」 入口としての整理整頓を

 

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夏季インターンシップの開催ピークが終わりました。 

各社様から伺う情勢は、エントリー数は概ね「前年並み」、企業・プログラムによっては「応募者減」の声も聴かれます。

「大きな問題・人数不足はない」ものの「母集団の前年比積み増しには遠い」といったところでしょうか。

こうした情勢を裏打ちするように、今シーズンの個別相談では、インターンシップへの問合せが激減しました。

「取れる打ち手はやりきった」「昨年並みの結果が出れば御の字」といった空気をご担当者様から感じています。

今号では、曲がり角を迎えたインターンシップの現在位置と、28卒以降を見据えた展望を考えます。

 

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■採用の「カギとなる施策」 耐用年数は3~5年

 

当サービス(STUDENTS' REPORT)のサービス開始は1990年。弊社での本格的な運営開始が2007年です。

以来約20年間、採用活動と向き合う中での経験則があります。

採用上のキラー施策、プラットフォームは「3~5年程度でピークアウトする」事実です。

現在の必須チャネルが「インターンシップ」ですが、すでに潮目を越えた実感を持っています。

 

(偶然かもしれませんが)3~5年は「ご担当者様の平均的な配属年数」でもあります。多くの採用チームが「現行施策の延長」でしか手を打ちにくいのは、こうした点が影響しているのかも知れません。

 

■飽和状態のインターンシップ 細かなカイゼン余地は残るが・・・

 

採用手法としてのインターンシップは、日本では1997年以来の歴史があります。

しかし採用チャネルの主力として定着したのは、概ねコロナ禍明け以降のことです。

 

・対面型インターンの本格的再開:23~24卒

・三井物産「選考直結型インターン」22卒

・「インターンシップの4類型」適用 25卒

 

毎年強化をつづけた結果、多くの企業様の実感は「無くす訳にいかない必須施策」ではあるが「これ以上リソースを割くのは無理」といったところではないでしょうか。

企業様ごとに細かなカイゼンはあるものの、大勢として「インターンシップにこれ以上の期待は持てない」ように思います。

 

■打ち手の本丸は「本選考の枠組み」 入口施策の整理整頓を

 

今後の採用戦略において成否を握るのは「入口としてのインターンシップ」ではなく「本選考そのものの枠組み」です。

中でも最重要検討ポイントは「コース別・職種別採用への対応」だと思われます。

ゼネラリスト採用中心の企業様では「そもそも導入すべきか」「実施可能か」が検討ポイントになるでしょう。

すでに着手済の企業様では、「適用職種の拡大」「配属後の効果検証」が俎上に載っておられます。

「インターンシップ」はあくまで、「採用枠組みの改革」を主軸とし、どの選考コースに誰を誘導すべきか、本選考と完全に連動した入口施策として配置しなおすべきでしょう。

 

 

総論はともかく、もう少し具体に落とした場合、本選考(とインターンの一体改革)にはどのような方向で考えるべきでしょうか。

 

■強化の方向1 コース別・職種別採用との完全接続

 

まずは、「コース別・職種別採用」と完全に連動したプログラムへの転換です。

すでに導入済の企業も見られます。日立製作所や富士通など、人事制度として「ジョブ型」に舵を切った企業が典型です。近年では、配属確約につながる「事業部別の就業体験インターン」を導入した住友商事もこれに類似します。

一方で、配属先を確約しない/できない企業が多いのも事実。そうした場合も、選考時には「コーポ系」「営業人材」など暗黙に目星をつけているはずです。「選考時の配属確約」は難しくとも「職種別インターンシップの拡充」は余地があるのではないでしょうか。

 

■強化の方向2 外資同様のジョブ型・選考直結インターン

 

2点目は「インターンシップを本選考に完全に組み込む」方向です。

(「コース別採用」と組み合わせれば、外資企業が行っている「ジョブ別・選考直結インターン」に近づきます)

日系大手では、三井物産が22卒から導入した枠組みが有名です。

多くの企業では「インターン参加後の本選考を<優遇>」していますが、実態は本選考プロセスの<代替・読み替え>です。「代替範囲を(実質内定などまで)拡大する」「対象者を増やす/想定内定枠の明示」などが考えられます。

 

■強化の方向3 年内内定などへの踏み込み

 

上記の2点(コース別・職種別採用)(選考直結インターン)に舵を切った場合、連動して、選考~内定時期は自ずと早くなるはずです。

内定後の歩留まり、フォローのコスト/パフォーマンスの点で、やみくもな早期化は弊害も大きく、強くお勧めはしません。

しかし「本選考制度の枠組み変更」と併せて、年内内定、1月内定などの別枠を(トライアル的にでも)検証する価値はあると思います。

 

■追加方策 オープン選考の強化

 

以上はいずれも、本選考を細分化し、応募時期を早期化させる方策です。

副作用として「後から参入する学生」「ゼネラリスト指向」「志望度の低い優秀層」を退けることになります。

対処の難しいテーマではありますが、この場合に考えるべきは「非優遇・オープン枠」「後期内定」の側です。

「インターン不参加者」「ゼネラリスト志向」「志望度の低い優秀層」に向けて、なるべく早く、インターン経由ではないプロセスを明示する必要があります。理想的には「インターン経由ルートと同時併設の」情報提供が求められます。「想定される内定数」「昨年度実績」なども示せれば、さらに良いと思われます。

参考例としては、商社ほかで定着した「6月選考」の設置などが挙げられます。 


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