【業界・各社動向】
〈商社〉
▼一部インターンの早期化
◇事例◇
〔住友商事〕
・昨年から新設された「Sumisho Hands-on Internship」は、「希望する組織で2週間の対面での就業体験ができる」ことが目玉。
・選考課題はES、筆記試験、自己PR動画(任意)、面接2回。また、参加者には本選考を一部免除の上、別ルートでの選考も明記されている。
・昨年度は11月に開催されたが、今年度は9月開催と2か月早期化。秋のインターンシップ前に内定が出ることも考えられる。また、インターンの日数は10日間から8日間へ短縮されたが、受け入れ組織数が増えたことから、参加人数の増加が見込まれる。
・就業型インターンの早期化に伴い、昨年度の「Sumisho Design Internship」の後継施策である「Sumisho 4days Internship」は開催時期が8~9月から10月~12月に後倒され、「Sumisho 1day Workshop」は4か月前倒して7~8月開催に変更されている。
▼AI面接の導入
◇事例◇
〔丸紅〕
・例年秋冬にインターンを開催していたが、今年は「Marubeni Summer Internship 2025」を新設。
・選考課題はES、筆記試験、AIによるケース面接、社員との面接。5大商社では初のAI面接を導入している。ケース面接でのAI導入は、思考過程や課題設定力の評価を意識している可能性がある。
◇解説◇
昨年度から新設された住友商事の部署配属型就業体験インターンは2か月早期化、丸紅も夏の複数daysインターンを新設しています。どちらも2回以上の面接の上参加できるインターンシップであり、本選考につながる要素が強いと見られます。
住友商事の例から見るに、学生の配属ガチャ敬遠を採用課題の一つと捉えている商社では、部署確約の選考を先に行うことで、より多くの学生を早期から囲い込もうとしているのではないか、と読み取れます。
一方で3大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事)の秋冬以降のインターン情報はいずれも現時点では未公開となっており、少なくとも夏に選考直結型のインターンを導入することはない模様です。
また、丸紅は今回AI面接を導入します。選考でのAI導入は初ですが、昨年度、「Marubeni Career College 2024」の選考落ちの学生向けに「自分の思考を見つけるAI面談&AI面談で紐解くキャリア設計セミナー」を行っていたことから、今回の結果次第では、今後もAIを積極活用していくことが予想されます。
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〈金融〉
▼専門性の高い職種別プログラムが増加。特にデジタルや資産運用領域で目立つ
◇事例◇
〔三菱UFJ銀行〕
・システム、DX系コースでプログラムの新設や早期化が見られる。26卒の選考でもシステム・デジタル領域は他コースより早めに選考を実施していることから、より早くデジタル人材の囲い込みを行っていると考えられる。
・「金融システム Internship」(5days/ 8月~10月)を新設。「MUFG就業型デジタルInternship」(2months/ 8月・9月)、「データサイエンスワークショップ」(2days/ 8月)、はどちらも2か月早期化。
〔三菱UFJ信託銀行〕
・「<選考直結型>5daysアクチュアリーインターンシップ」(5days/9月)を新設。昨年「選考直結型」を銘打ったのは「5daysファンドマネジメント プレミアムインターンシップ」(2コース、12月開催)のみであり、アクチュアリー領域の需要の高さがうかがえる。
〔みずほフィナンシャルグループ〕
・「Experience R&Dスペシャリスト(3Days)」という先端技術・科学技術・AI分野の研究開発体験型ワークショップ、「Experience ITストラテジスト」(1day)という銀行システム企画ワークショップ、「Experience アセットマネジメント」(5days)というアセットマネジメントビジネスの業務理解セミナーを新設。
〔第一生命〕
・資産運用部門を対象とした「夏期 インベストメント・マネジメントコース(5days)」を新設。募集条件に、資産運用に関する素養がある方が望ましいと明記。
〔三井住友海上〕
・「専門人財向け アクチュアリーインターンシップ(冬)」を新設。募集条件に、専攻イメージとして、確率統計、金融工学、数理科学、数値解析、その他理工学系分野と記載。
〔東京海上日動〕
・「2027 Marine College (SPECコース) ~Summer~ アクチュアリー」を新設。主な配属セクションとして、商品開発部門、資産運用部門、リスク管理部門が明記されており、特定分野の専門性を高めながらキャリアアップを目指す学生を募集。
◇解説◇
職種・コース別採用が進む金融業界では、専門性の高いデジタル/資産運用系コースの拡充が目立ちます。「金融業界は専門性の身につく仕事」とのイメージも広がっているため、より専門性を重視した採用戦略にシフトしているといえます。
そして、専門人材の獲得競争が年々早く、かつ激化していることが、三菱UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行のコース新設や早期化の動向から垣間見えます。
アクチュアリーやデジタル系といったスペシャリストへの需要が高まるにつれ、理系人材へのアプローチも顕著になってきました。三井住友海上は、金融工学、統計分析といった数理素養を募集要件に記載。みずほフィナンシャルグループでは、昨年1dayのみだった「Experience R&Dスペシャリスト」を3Days/1dayの2コース設計に組み替え、「しっかり学べる3daysとライトに体験できる1day」を選択可能に。募集要件は学部学科不問ですが、「技術に対する好奇心・挑戦心」「技術で顧客・社会課題を解決したい」人におすすめ、と明記されています。
▼コンサルティング業務体験を押し出したコースも増加傾向
◇事例◇
[三井住友銀行]
・「2DAYS PROGRAM 課題解決編」を新設。企業・経営者に対する、コンサルティング&ソリューション業務を体感できるコースと案内。
[日本生命]
「秋の2DAYS 営業総合基幹職 マネジメント・総合コンサルティングコース」では、顧客に寄り添った「コンサルティングワーク」、マーケット環境や顧客ニーズを踏まえた「戦略策定ワーク」に取組むコースを新設。
◇解説◇
「戦略立案」、「課題解決」、「ソリューション提案」といったキーワードを用いたコースが増加。金融業界は「コンサル的な仕事」との認知も獲得しており、「顧客との関係性が深い」「戦略だけでなく現実的なソリューションも提供できる」という切り口で、コンサルとのイメージ上の差別化しながら、コンサルと併願している学生にもアプローチをしている。
▼複数のインターンを繋ぐパターンの増加は現時点では不明
◇事例◇
[日本政策投資銀行]
・1dayワークショップ参加が3daysインターン(夏/秋)参加の条件。3daysインターン参加者は「本選考プロセスが特別なフローになる」と案内
[三井住友海上]
・特定のインターンからセカンドインターンやビジネスコンテストを経て早期面談会に繋がることをインターンサイトで公開。
・5daysインターンシップ(夏/冬)が入口施策。夏ターム参加者はゴールの早期面談会まで3ルートあり、早期面談会に直行するルート、「Premiumインターンシップ」経由のルート、「Premiumインターンシップ」→「ビジネスコンテスト」経由のルートが提示されている。
◇解説◇
・学生はインターン選択時に「本選考への優遇の有無」を重視する傾向がありますが、インターンサイトやプレエントリー時点でそれを公開しているケースは多くありません。ES提出後、事前説明会出席後、インターン参加後などが、案内のタイミングになっていると推測されます。
・それに対し、日本政策投資銀行や三井住友海上は、あらかじめセカンドインターン・施策のステップを提示しています。学生にとっては選考ステップ・スケジュールの見通しもつき、公平性も感じられる対応と受け止められる可能性があります。
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