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Z世代の“離脱”を防ぐには?──ドタキャンと内定辞退への実践的アプローチ


 

 

Z世代の“離脱”を防ぐには?──ドタキャンと内定辞退への実践的アプローチ

 新保博文(株式会社ピボット シニアコンサルタント/株式会社 Work with Joy CEO)

 

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Zoomの待機室に学生が現れない。内定承諾後、連絡がつかなくなる——。

こうした“選考離脱”は、採用担当者にとって年々深刻さを増しているテーマです。

 

Z世代の特徴として指摘される「対立回避」や「気まずさを避けたい」という心理的傾向は、選考辞退やサイレント離脱といった行動に強く影響を及ぼしていると、前回ご説明しました。こうした傾向に対して、頭ごなしにマナーを説いたり、ルールで縛ることには限界があります。

 

今号では、Z世代の行動背景を踏まえた上で、面接ドタキャンと内定辞退という2つの主要な離脱ポイントに対し、採用側が現場で実践できる対策について詳しくご紹介します。

 

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▼面接ドタキャンはなぜ起きる?

 

Z世代のドタキャン行動の背景には、「気まずさの回避」のほか、環境変化による「面接に対する学生側の受け止め方の変化」があります。その変化について、以下3つの要因に整理して、ご説明します。

 

一つ目は、「予定に重みがなくなった」ことです。

オンライン化により、説明会や面接の参加ハードルが大きく下がった結果、“とりあえず申し込む”行動が増えました。スカウトを受けたから、エージェントに勧められたからなど、受動的に予約された面接は、学生本人の中では優先順位が低くなりがちです。

また、オンライン化に伴い、より多くの予定を詰め込む傾向も見られます。単純に“多数ある予定のひとつ”になれば、重みは自ずと下がります。

 

二つ目は、「相手を知らない」ことです。

学生とのやり取りに利用する媒体では、メール文などのテンプレ化が進み、事務的すぎるケースが散見されます。担当者の人柄が伝わらない・面接官の顔が見えないまま当日を迎えると、相手が“人”として認識されず、「迷惑をかけてしまった」という感覚が持てません。

相手を知らなければ、思いやることもできません。社会経験が浅い学生にとって、「自分の行動が相手に与える影響」を想像するのは難しいことなのです。

 

三つ目は、「ギリギリまで悩める環境にある」ことです。

オンライン面接であるがゆえに、移動も準備も不要。直前まで「出ようか、やめようか」を悩み続けてしまいます。時間が来てしまい、「今さら連絡しても…」と放置してしまうケースも少なくありません。

 

▼面接ドタキャンを防ぐには、「確定時」と「リマインド時」に2つの仕掛けを

 

こうしたドタキャン行動に対して、企業側が打ち手を講ずるタイミングは2つしかありません。「面接確定時」と「直前リマインド時」です。上で挙げた学生心理を踏まえ、対策を整理していきます。

 

(1) 面接確定時に「人が対応する」ことを伝える

たとえば、面接日程確定メールに「〇〇さんの面接には、現場で活躍する入社3年目の△△が対応します」と書くだけでも、学生の中に“相手がいる”という実感が生まれます。

担当社員の簡単なプロフィール(「元体育会系で、今は営業として全国を飛び回っています」など)や、インタビュー記事を添えるのも効果的です。「誰が出てくるのかわからない」という不安や無関心が、“親しみ”に変わるよう仕向けるのです。

また、「普段はワークライフバランスのために、生産的に仕事に取り組むことを意識しており、プライベート時間もしっかり確保しています」などと記載すると、“面接は相手の貴重な時間を割いて行われる”と暗に意識させることもできます。

 

(2) 面接直前には、「気軽に変更連絡OK」+「楽しみにしている」の両軸で押す

前日・当日のリマインドでは、「もしご都合が悪くなった場合は、ここからキャンセル・変更ができます」と案内する一方で、「△△も〇〇さんとお話しできるのを楽しみにしています!」というポジティブなメッセージを添えることがポイントです。

文面は少しくだけた口調で、“人の生声”を感じさせる表現が効果的です。さらにLINEやSMSなど、学生が日常的に使うチャネルで通知すれば見逃し防止にもつながります。

 

▼見極めの一つにするという考えもあり

 

一方、採用方針として「ドタキャンするような学生は、この時点で見送る」と判断する企業もあります。面接の時間は社員のリソースを使って設けられたものであり、それを無断で放棄するという行動に対し、「相手の予定を大事にできない時点で、自社のカルチャーには合わない」と考えるスタンスです。実際、ドタキャンがひとつの選考基準となっているケースもあります。

「まだ社会経験の浅い学生を一度のミスで切り捨てることには慎重であるべき」という意見もありますが、価値観や行動規範を重視する企業にとっては、ひとつの“見極めの機会”と捉えられているのも事実です。

重要なのは、自社としてのスタンスを明確にすること。「ドタキャンによって見極めることができた」と考えれば担当者のがっかりも軽減されます。

 

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▼内定辞退を防ぐには? 承諾前後の2フェーズで考える

 

内定辞退に関しては「内定承諾まで」と「承諾後」に分けて対策を検討しましょう。

 

フェーズ①:内定承諾までに辞退されないための工夫

内定通知を出しても即座に承諾をもらえるとは限りません。まだ他社をみている、親と相談したい、迷いがある。そんな状態の学生に対しては、「この会社に入りたい」と思ってもらう必要があります。

“オファーをどう演出するか”は極めて重要です。ある企業では、オファーレターに学生の強みや選考時の評価ポイントを個別に記載することで、「自分を本当に見てくれていたんだ」という実感を誘い、ミスマッチも防いでいます。

また、学生の自宅に訪問するという企業もあります。結果的に「オヤカク対策」としても有効な取り組みの一つです。さらに、内定授与式を実施することで重みをもたせるケースもあります。

もうひとつの観点は、”関係性を強固にする”ものです。内定フォローアップのランチやディナーを設け、エグゼクティブクラスの魅力で惹きつける企業も多く見られます。

また、内定を出す前のタイミングでサポーターを付けることも効果的です。最終面接に進む学生にメンターをつけ、最終面接を通過するサポートをすることで、「一緒に勝ち取った」と思ってもらい、それがひいては「一緒に働きたい」につながることもあります。

 

フェーズ②:内定承諾後の辞退を防ぐための工夫

承諾後も、学生は不安や迷いを抱えるものです。ここで重要なのは、“関係が切れない”工夫と、“辞退を言いやすくしておく”仕組みの両立です。

たとえば、SlackやTeamsなどに内定者チャンネルを開設し、ゆるくつながり続けられる場を作ることで、学生は「まだ見守られている」「自分はこの組織の一員になってきている」と感じやすくなります。

また、人事とは別に若手社員を内定者のメンターとして配置することで、仕事や職場のリアルな姿を知り、入社への期待が育っていきます。

インターンや社内イベント(表彰式や新規事業立案など)に参加してもらうのも有効です。内定者が“ただの学生”ではなく、“仲間”として社内に関わることで、辞退しにくくなると同時に入社後の活躍イメージも湧きやすくなります。

 

一方で、「どうしても辞退したい」と思ったときに連絡がしづらい状況だと、結果的にサイレント辞退になってしまうことも。そうした事態を避けるために、アプリやWebフォームで辞退を連絡できる仕組みを整備することも大切です。電話やメールよりも心理的ハードルを下げておくことで、お互いにとって誠実なコミュニケーションが成立します。

 

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▼選考離脱を“責める”のではなく、“設計で防ぐ”

 

Z世代の選考離脱は、「非常識」という言葉で片づけてしまうには惜しいヒントが詰まっています。選考のスケジュール、内定のタイミング、あるいは確保できる工数によってもできる取組は様々です。重要なのは、選考から入社までの長いスパンの中で、自社に適した離脱抑止策をどう設計していくか、ということです。

 

各社様ごとの個別ミーティング(アドバイザリー・ミーティング)で施策設計の壁打ちも可能です。以下までお気軽にお申し付けください。

(実施内容のお問合せ・ご予約)

株式会社ピボット シニアコンサルタント 豊崎康弘

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