<9月の採用市場ウォッチポイント>
多様化する募集・選考ルートのパターンと評価
株式会社ピボット 代表取締役/ブランドコンサルタント 西山亜矢子
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■募集・選考ルート設計の軸
昨今の募集・選考ルートの基本構造は、以下の3軸のかけ合わせです。
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A軸(時期):2ターム制(前期/後期)+早期優遇
B軸(コース:職種):職種などを限定/オープン
C軸(インターン連動):採用直結インターンを経由する/経由しない
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【A軸(時期)】前期/後期(+早期優遇)
「選考~内定出しのピーク期が分散し、いくつもある」という市場環境に適応し、「選考時期を前期と後期に分割する」企業が主流になりつつあります。
現在の主流は「前期=3~4月」「後期=5~6月」です。
自社に適用する際には、競合先の日程も勘案しながら、
・最適な時期(月)の選択
・どの職種・コースに前期/後期を割り振るか
も重要です。
【B軸】コース:職種などを限定/オープン
「職種/事業・ビジネス/勤務地/働き方などを限定できるコース」の設置が増えています。
限定コースは細分化・複雑化が進んでおり、限定したコースを選べない/選ばない学生のために「オープンコース」を併設するのが一般的です。
限定コースの設定意図は、
・会社としてジョブ型採用を目指す
・学生の志向に合わせた選択肢を準備し、人気アップ/ミスマッチ軽減/口説きコストの低減を目指す
などです。
ただ、「志向が本当にハッキリしている(やりたい仕事がある)」学生は一握りで、大多数は「この職種(あるいは条件)だけは嫌」という消去法的な軸で選択をしています。
選択しているコースに対するロイヤルティは必ずしも高くないことには、注意が必要です。
【C軸】採用直結インターン:経由する/経由しない
(注) 「採用直結インターン」の理解には学生と企業にズレがあります。
学生は以下のパターン(a)(b)(c)を全て「採用直結」と認識しています。
企業サイドでは、(b)(c)を「採用直結インターン」と呼称しているようです。
(a)インターン参加の有無によって、本選考の告知・開始時期などに多少の優遇がある
(b)インターン応募時の選考(書類・面接)に応じて、本選考の同様のステップが免除される
(c)インターン応募~参加時の評価が高い者のみ、専用の選考ルートに直結する
この1~2年で増加しているのは(c)のパターンです。
対象職種などを限定し、早期からの就活層・優秀層を吸引するために行われています。
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■パターン別のメリット・デメリットを考える
「募集・選考ルート」の設計とは、A・B・Cの3軸のどれとどれを採用し、掛け合わせるかだと言えます。
実際に設計に取り組む際には、次のような手順になると思われます。
(1)採用上の意図(どのようにスクリーニングしたいか)に即して軸を設定
(2)学生側視点での受け止められ方をチェック(ユーザー・ジャーニー)
(3)企業・学生双方のメリット/デメリットを評価し修正
ここでは、メリット/デメリットの評価について、具体例(モデルケース)を示してみます。
(※ 25卒の実例をもとに、業界・内容を適宜アレンジしています)
(例1)総合商社 A社
◇採用直結インターン(前期/後期)からしか応募できない
◇コースは「職種or事業」で限定されている
◇「インターン選考→インターン参加中の評価→通過者が最終選考参加」
<メリット>
【学生】
募集の構造がシンプルで理解しやすい
【企業】
「やりたいことがハッキリしている学生or志望度の高い学生」が採用直結インターン参加者の中心となる
「書類・選考・ワークの全部の能力が高い=総合スキルが高い」学生だけが最終選考に進む
<デメリット>
【学生】
就活開始が遅い(=職業意識の仕上がりが遅い)上位校の伝統体育会の学生などは応募しづらい
「インターンに参加した結果、その職種・事業がイメージと違った」としてもコース変更がきかないため、ミスマッチ対応の柔軟性はない
【企業】
やりたいことをしっかり決めないと応募・通過できないため、かえってポテンシャルの高い応募者が減る可能性がある
採用予定数の2倍程度の規模で/職種・事業の数だけ/高質なインターンを開催する必要があり、(特に時期が集中した場合)業務負荷は高い
<このパターンへのアドバイス>
・ここまで振り切ったパターンは、人気企業以外には向きません
(ターゲット学生に対する採用競争力が高い企業にしか向かない)
・各コースのターゲット学生と行動パターンを予測し(ペルソナ設定)、ペルソナ最適な日程で実施することが、スムーズな内定者確保につながります
(例2)メーカーB社 事務系職
◇「(1)採用直結インターン=前期」「(2)オープン=後期」の2ルート
◇(1)枠は「インターン選考→インターン参加→全員が最終選考参加」
<メリット>
【学生】
募集の構造がシンプルで理解しやすい
【企業】
「タイプの違う2種の選考を/時期をずらして/実施」する形なので応募・受験者の複雑な分岐がなく、選考管理の運用はシンプル
「やりたいことがハッキリしている学生or志望度の高い学生」を前期に吸引できる
<デメリット>
【企業】
限定コースの枠を狭くし過ぎると、学生からは「(1)枠(前期)=エリート枠、(2)枠(後期)=ソルジャー枠」に映り、優秀層が後期を受験しない
流入設計を誤ると「(1)枠(前期)で母集団を先食い→落選者の前期離脱」が起こりやすい
【学生】
「志望度が低いが/就活力やポテンシャルが高く/3~4月に内定を獲得しそうなタイプ」が受験しやすい枠がない
<このパターンへのアドバイス>
・前段階として、ターゲット学生をタイプ分類(細分化)し、どのタイプを/どういう流入経路から/どの枠へ流し込むかを、十分シミュレーションすることが必要です
・上記を踏まえ、「(1)枠(前期)の流入経路」「(2)枠(後期)の具体的な時期選定」を最適化することが、採用全体の成否を分けます
(例3)金融C社
◇「3軸全パターン」のルートが存在
◇各ルートは、応募・受験後の評価により柔軟に分岐
◇ルート毎の典型的な選考フローは(学生には)明示されない
<メリット>
【学生】選択肢が多く、あらゆるタイプの学生に/いつでも対応できる入口がある
【企業】応募・受験の入口に関わらず、学生を評価に応じた選考ルートに乗せることができる
<デメリット>
【学生】募集の構造が複雑で理解が困難。自分の希望とマッチするコースが、かえって選びにくいという事態が発生中
【企業】とにかく運用(特にATS、応募者管理)の負荷が高い
<このパターンへのアドバイス>
・「8~10名規模の採用担当社員」「堅牢な応募管理システム(ATS)」「訓練された自律的な協力社員組織」を全て整えられるなら、実は成果の出やすいやり方です
・「業界・職種の志望度・解像度がともに高いトップティア学生」に対してのみ、時期・選考フローが明確なルートを準備できれば盤石です
募集・選考コースの設計は、入社後の育成・配属にもかかわる重要な枠組みです。
しかし、多忙な採用実務の中では「前年度の踏襲・改修・増設」によって構造が複雑化、曖昧化しがちでもあります。
26卒選考の枠組みを最終確定するタイミングで「きれいに整理された」コース設計となっているか、再度見直していただければ幸いです。
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