監修:株式会社ピボット 代表取締役/ブランドコンサルタント 西山亜矢子
●採用ブランドポジション(人気・併願傾向等)
*文系上位校学生が「最初に思い浮かべる企業・業界」から外れる傾向が進む。
*就職活動の早い段階で「有形商材/無形商材」の区分が学生に浸透・流布される。無形商材の方が「人が価値の源泉になる」イメージが強く、メーカーは早い段階で視野から外されがち。
*「理系中心/文系は活躍しにくい」という従来からの離反理由に加え(あるいはそれ以前に)、「無形商材>有形商材」というフィルターを外す必要がある。
*「日本の基幹産業」、「世界に誇る競争力」といった、かつて日本の製造業を象徴していたキーワードは学生の中で失われている。
*(関連して)代表的メーカーのイメージが「toB(素材・電機など)」から「toC(食品・飲料など)」にシフト。「メーカー志望」の内実が「消費財メーカー」であることも珍しくない。
*逆風の強い中、メーカー志望の初期接点としては、「業界を問わずインターンを手当たり次第受けた」結果、社風等の印象がよい企業として選ばれることが多い。
*メーカーにひもづくポジティブイメージは「ホワイト」「海外での活躍の機会が豊富」「人や社風が穏やか・善良」。ネガティブイメージは「年収面」「自己成長スピードの遅さ」。
*学生に「特定職種へのこだわり」が少ない場合、配属部門・事業さえ固定できれば「(商社・金融より)配属ガチャが少ない」「異動で職種が変わっても、キャリアの一貫性・安定性を保ちやすい」としてメーカーは好感される。
*年々強化されている「職種・コース別採用」により、「メーカー志望」ではなく「特定職種」ねらいでメーカーを併願するケースは増えている。
*特に人気のある職種・コースは「マーケティング」。「外資系メーカー受験者(落選者)」「コンサル内定保持者」などの併願も多い。
*「デジタルイメージが強い」「デジタル職の募集がある」企業も人気が高い。この場合「有形商材」のハンディは薄れるか、魅力に転じる場合もある(デジタル・マーケティング等)。専門知識・経験を求めないデジタル系1dayインターンの増加もあり、受験層が拡大している。
●スケジュール
*「インターン経由の早期選考ルート」と「通常選考ルート」という設計が主流。
*メーカー全体として早期化傾向が鮮明で、通常ルートでも大半の企業が4月末までに内定出しに至る。選考や内定を6月まで持ち越す企業はほぼない。
化学メーカーは特に早期化傾向が強く、選考開始が24卒比で1ヶ月程度前倒しになるケースも見られた。
*インターン経由の早期選考は2月下旬から、通常選考は3月下旬から本格化する印象。
*早期ルートと通常ルートの日程にかなり差をつけているケースも多い。結果として選考日程は1~5月に広く分散した。
*トヨタ自動車、ソニー、サントリー、キリンなど、吸引力の強い企業では相対的に遅い時期の選考ルート(5月以降の内定)も併設している。
●採用プロセス・手法
【コース設計】
*年を追うごとに「職種/ジョブ/事業/部門などを指定できるコース」を設ける企業が増加。
*コースを細分化する場合も、多くの企業では、「専門や分野を指定しないオープンコース」を併設している。
*(技術系採用での運用実績もあってか)メーカーでは本格的なコース別採用の設定がスムーズに進んだ。一方で、文系学生は「より確実に内定を得る」観点から、応募時に本来の志望職種・コースとは異なるオープンコースやセールスを選ぶケースが多く見られ、後の内定辞退の一要因となっている。
【インターンシップとマッチング・選考優遇】
*選考直結型インターンが目立つ。25卒向けでは、キリン(マーケティング)、サントリー(セールス/マーケティング/財経)などのコースが選考直結型になった。
*22卒より、日立製作所がジョブ型インターンを導入・対象を拡大中。富士通は長期(1~6ヶ月)の有償インターンを展開するなど、各社の取組みは深化の一途を辿る。
*従来、メーカーでは配属先の理解促進と調整の機能を「ジョブ・マッチング」「リクルーター面談」が担ってきたが、現在その機能は「(コース別などの)インターン」が担いつつある。
*インターンに限らないマッチング施策も模索されている。パナソニックでは、生成AIを適性職種の案内に活用。三菱電機は「配属先指定リクルーター制度」を技術系採用で導入。事務系採用にも参考にできる洗練された内容となっている。
【選考・内定出し】
*コース設計の進化を受けて、それに最適化した選考手法の開発も進む。
ソニーは職種(仕事内容)に直結した内容のES設問を設けている。日立製作所ではガクチカは聞かず、23卒から「入社後どの職種で日立のどのリソースを使ってどんな社会課題に取り組みたいか」をプレゼンする選考を導入している。
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