【10月の採用市場ウォッチポイント】


専門人材確保のために1on1コミュニケーションの内製化を

株式会社ピボット 代表取締役ブランドコンサルタント ⻄山亜矢子


 

新卒であっても専門性が要求される領域(専門人材)の「理系」「財経・知財」などでは、従来から一般的な文系総合職の新卒採用とは異なる手法で採用を行ってきました。

 

「デジタル人材採用」を含めて専門人材ニーズは新卒でも拡大の一途を辿っています。

 

今号では、「専門人材確保のために効果的な採用手法はどのようなものか」を考えてみたいと思います。

 


▼ベースは経験者採用モデルに近い

 

大きな方向性として、手法が経験者採用に近づいていっています。

まず、「経験者採用モデル」を言語化(=以下のステップ(1)〜(4)に整理)してみました。

 

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(1)ターゲットを明確にしたピンポイントな名簿の取得→実行責はエージェント

 

「××ナビ」のような大きすぎる鉱脈からターゲットを掘り出すのは、かえって困難です。

したがって、次のような手法を組み合わせて名簿を取得することになります。

 

・「特化した専門人材を囲っている小さなチャネル」複数を束ねて集客

・「比較的大きな括り(たとえば「技術系学生」など)の専門人材チャネル」から条件で抽出してスカウト

・リファラル(採用対象にピッタリな社内外の人材経由での紹介)

 

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(2)オンラインベースでの個別連絡・情報提供→実行責はエージェント

 

会う前のオファーや連絡段階で「絞り込みとアトラクト(惹きつけ)」をどれだけ達成するかが、最終的な成否に大きく影響します。

 

別の言い方をすると、早い段階での「応募者個人へのアジャスト、カスタム対応をいかに適切に実施できるか」ということです。

 

具体的なスキルに分解すると、

・プロフィールからの応募者像の正確な推察力

・相手に刺さるオファー文面や企業アピール文面の作成力

が必要と言えるでしょう。

 

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(3)カジュアル面談などでの相互マッチング→実行責は採用を行う企業

 

オンラインのやり取りの次が「いきなり本番の面接」では参加者の心理的ハードルが高いため、新卒で言えばOBOG訪問もしくはゆるめのリクルーター面談のようなものを挟みます。

 

・互いの本音を引き出し、深いコミュニケーションをするための「発言しやすい環境づくり(食事、お酒もOK)」

・相手の参加しやすさ優先の「短時間・頻回な実施」

・入社イメージが浮かびやすい「本人もしくは募集職種に合致したモデル社員の選定」

などの工夫をします。

 

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(4)選考→実行責は採用を行う企業

 

新卒と異なると思われる点のみを指摘すると、

・条件面の詳細な開示とすり合わせ

・現場寄り(もしくは現場に権限の移された)面接の実施

になろうかと思います。

 


▼経験者採用モデルを新卒で実践するためのハードル・アイディアなど

 

経験者採用モデルは、専門人材の確保に有効なモデルと考えられます。

しかし、新卒採用に移転して実践するためには、多少の工夫を要します。

 

以下、実践のためのハードルとアイディアについて記します。

 

 

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<ハードル>

 

◇「(1)ターゲットを明確にしたピンポイントな名簿」を備えたベンダーが特定しづらい

 

文系の上位校人材であれば、外資就活ドットコムやワンキャリアをお使いの方も多いでしょう。

しかし、「デジタル人材」「事業創造型0→1人材」などを探そうとすると、決定版のベンダーがどこかは分かっていないのが現状です。

 

したがって、可能性がありそうなチャネルを(探した上で)数多く試さざるをえず、「いつもの」採用よりも工数が多くなることは避けられません。

 

 

◇「(2)オンラインベースでの個別連絡・情報提供」をエージェントが代行してくれない

 

実はこれが最も大きなハードルかと思います。

新卒では、名簿を提供してくれるエージェントは基本的に「詳細な条件でのリスト抽出やそれに対する個別性の高い連絡業務」は代行してくれません。

 

スカウトサービス(ダイリク)を利用すると、マニュアルなどで「効果を高めるために、お一人お一人にピッタリなオファーメールを送ってください!」と推奨されているかと思います。

 

しかし、(数十人以上のボリュームで新卒採用を行うような)ご担当者がそうした1on1対応を行うのは、現実的には無理です。

 

 

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<アイディア>

 

◇まずはリクルーター組織を応用して、リファラルの仕組みを作ってみる

 

「決定版」のベンダーはおそらくすぐには定まらず、(いったん定まったかに見えても)コロコロと変わるでしょう。

 

その意味では、社内の該当者(社員・内定者)を集め、リファラルを始めるのが初手としてはおススメです。

 

立上げの腰は重くなりがちなのですが(分かります)、仕組みとしては「OBOG訪問やリクルーターの設置」と同様です。

作ったことがあるモノですから、着手すれば再現は容易なはずです。

 

回り始めれば長期的な財産にもなり、確実かつ無駄もありません。

 

 

◇1on1の代行エージェント(採用代行のサブスクサービス)を活用してみる

 

名簿提供エージェントが請け負ってくれない一方で、スキマを埋めるようにオンラインベースでの個別連絡・情報提供を代行してくれるエージェントが出始めました。

 

スタートアップや経験者採用では活用されており、「採用代行のサブスクサービス(月額固定)」と呼ばれていることもあります。

デジタル人材採用に限定すれば、複数のサービスが存在しています。

 

この場合、エージェント選びのポイントは、会社の規模や実績よりも「対応してくれる担当者の能力」です。

なぜならば、「担当者の能力・知見ベースの完全手作業」と考えられるからです。

 

その点、他業務を発注している信頼できるパートナーがいる場合は、その方に打診してみてもよいかもしれません。

 


▼まとめ

 

突き詰めると、専門人材確保のために経験者採用モデルから汲むべきエッセンスは「巧みな1on1コミュニケーションの確立と実施」です。

 

しかし、学生のビヘイビアから想像するに、新卒採用は今後も成功報酬型(の人材紹介)は成立しづらいと考えられます。

したがって1on1コミュニケーションの主な引受先は、「自社採用チーム内」となる可能性が高いでしょう(あるいは部分外注)。

 

それならば「いち早く内製化を行い、方法論を確立した企業が専門人材の確保に成功する」のではないでしょうか。

小さな一歩でよいので、先んじて着手されることを強くお勧めします。

 


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